模造品
アンモライトを模造するのは容易ではなく、めったに行われない。しかし、あまり詳しくない人には見分けがつかない程度には似ている物質も少しは存在する。ラブラドライト、遊色効果のある長石(これもカナダ産)、broad-flashの黒オパールがそれである。なお、ラブラドライトはカナダのラブラドル半島で発見された斜長石の一種で曹灰長石と呼ばれる石である。一定の方向に色の付いた閃光を放つ性質がある。フィンランド産のラブラドライトはスペクトロライトとも呼ばれる。どれも完全に納得させられる代用品とはなりえないし、黒オパールに至ってはアンモライトよりも価値が高い。実際、アンモライトはしばしは黒オパールの模造品として使われている。よくあるガラスベースのオパール模造品であるslocum石は、上のものほど似てはいないが可能性はある。ラブラドライトの場合は、青または紫のものが普及性が高い。アンモライトでは遊色効果はわりと限定的であるのに対し、青、紫のラブラドライトおよびオパールにおいては、石全体にわたって虹色が見られる。slocum石では遊色効果は金モール状パッチの形をなす。
模造品では石は透明ないし特定の角度から見ると半透明なのだが、アンモライトは全体的に不透明であるから、見た目の構造もかなり違う。地質学的にいうと、アンモライトは貝殻ベースの大理石に分類される。同じグループにはlumachellaまたは"fire marble"が含まれる。これは化石化したカキとカタツムリの殻でできた、アンモライトに似た遊色効果の大理石である。lumachellaはイタリアとオーストリアに産出するのだが、宝石として利用されることはほとんどなく、むしろ壁などの化粧仕上げの装飾かモザイクに使われる。lumachellaの遊色効果は断片的で、アンモライトの光沢ほどには鮮明ではない。こうした違いにも関わらず、lumachellaはアンモライトと同義であると考えている人もいる。主に青緑の遊色効果を持つアワビの貝殻は、模造品として最後の可能性である。これら腹足類は食用に商業的に養殖されているので、アワビの貝殻は安価で大量に入手できる。その貝殻の構造は特徴的である:青、緑、ばら色の波状の帯がコンキオリンのこげ茶色の帯で縁取られている。コンキオリンとは、貝殻を固めているタンパク質に富む物質。アワビ貝の光沢は磨かれたアンモライトのガラス状の光沢というよりも、むしろ絹状光沢であり、その色もアンモライトにはあまり似ていない。しかし、アワビ貝を染色し人造水晶の透明なキャップをかぶせることでアンモライトと同じ二重層構造を作ることは、既になされている。こうして出来た二重層はかなり見た目がそっくりになるので、模造オパールにも利用されている。拡大鏡で観察すると、ほとんどのアワビ貝二重層は特定のエリアに濃縮された染料と、貝殻-水晶の接合面に空気の泡が溜まっているのが観察される。