エーテル理論のその後
特殊相対性理論の基礎はローレンツの理論である。ローレンツは、「長さの収縮」や「時間の遅れ」に表されるように、物体の特性はエーテル中の運動により変化すると考えた。これに対しアインシュタインは、より根本的な原理から「長さ」や「時間」といった性質を導出できるはずであると考えた。そして、ローレンツ変換をマクスウェルの方程式から切り離し、時空間の性質を表す基本的な法則であると仮定した。両者の違いは、すなわち、長さや時間について絶対的な基準を設けることを可能と考えるか否かである。ローレンツはエーテルを基準とした絶対座標系の存在を考えたのに対し、アインシュタインはその存在を否定した。これが「相対性」理論と称される所以である。マックス・ボルンが''Einstein's Theory of Relativity''で述べたところによると、真空であっても空間には重力場や電磁場が存在することから、こうした空間を「エーテル」と呼ぶことをアインシュタインは提唱したという。この場合、「エーテル」は従来の意味でいう物質を表わす言葉ではなくなり、エーテルには位置という概念が存在せず、従って「エーテルに対する相対運動」を考えることは無意味となる
。これは、物理哲学の問題であり、結着はついていない。アインシュタインは相対性原理を最も根本的な原理として考えたのに対し、ローレンツは相対性原理の根本がエーテルであると考えたのである。サイエンス・フィクションの世界では、20世紀に入ってからもエーテルがしばしば登場する。レンズマンシリーズなどでは、エーテルに何らかの干渉を行うことで超光速航法を可能にした宇宙空間を「サブエーテル」と呼称している。また魔術や錬金術を扱った作品でガジェットとして登場する事も多い。エーテルは、コンピュータネットワークのイーサネットの語源にもなっている。