オリハルコン【その他の古典文献におけるオリハルコンの記述】

オリハルコンについて

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その他の古典文献におけるオリハルコンの記述


ヘシオドス (''Hesiodos'', 紀元前700頃に活躍)が書いたと伝えられている詩『ヘラクレスの盾』の断片の中で、英雄ヘラクレスが「ヘパイストスからの見事な贈り物である、輝けるオレイカルコス製の脛当てを装着した」という一節がある。これがオレイカルコスという単語の初出と考えられている。(Hes.Scht.122)『ヘラクレスの盾』は実際には紀元前6世紀中頃の作品とするのが有力な説である。ホメロス (''Homeros'', 紀元前9?8世紀頃に活躍)が書いたと伝えられている『ホメロス賛歌』の第6章、アプロディテへの賛歌の中で、女神アプロディテは「両耳よりオレイカルコスと尊き金で出来た装飾品を下げている」と謳われている。(h.Hom.6.9)『ホメロス賛歌』は複数の詩人によって時代をおいて作られた34編の詩の集合体であるが、こちらの方が『ヘラクレスの盾』よりも古いとする人もいる。ストラボン (''Strabon'', 紀元前64頃?紀元23頃)の『地誌』第13巻によると、トロヤの近郊のイダ山の北西の麓に位置したというアンデイラの町では、燃やすと鉄になる石が採れたが、これをある種の土類と一緒に溶鉱炉で燃やすとψευδ?ργυρο? (''pseudarguros'')「プセウダルギュロス」(古代ギリシア語で「偽の銀」を意味するが、おそらく亜鉛のこと)が精錬される。このプセウダルギュロスは銅と合金を作り、オレイカルコスと呼ばれるものになる。プセウダルギュロスはトゥモロスの山でも産出した、と記されている。(Strabo.xiii.1.56)紀元前350年頃にアリストテレス (''Aristoteles'', 紀元前384?322)は、『分析論後書』の中で、言葉の定義について議論しており、定義の曖昧な言葉の例としてオレイカルコスを挙げている。(Arist.APo.92b22)また『異聞集』第58節によると、カルタゴ人が支配するデモネソス島では、κ?ανο? (''cyanos'')「キュアノス」(= cyan シアン。正確には不明だが、シアン色の青銅鉱と解釈されている)と孔雀石が採取され、更に島の沖合いには素潜りで採掘できる銅の鉱脈がある。シキュオンの町にあるアポロンの銅像は、ここで採掘された銅で作られ、ペネオスにあるオレイカルコスの像も、この島で採掘されたものから作られたという。(Arist.Mir.834b25)プブリウス・ウェルギリウス・マロ (Publius Vergilius Maro, 紀元前70?19)の大作『アエネイス』 (''Aeneis'', 紀元前19)にアルボクェ・オリカルクム alboque orichalcum「白いオリカルクム」という言葉が登場するが(Ver.A.12,87)、マウルス・セルウィウス・ホノラトゥス (Maurus Servius Honoratus, 紀元4世紀頃活躍)の注釈本によると、これは王金(亜鉛25%含有の黄銅)を指す。(Serv.A.12.87,12.210)ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|大プリニウス (ガイウス・プリニウス・セクンドゥス, Gaius Plinius Secundus; 紀元23?79)は『博物誌』 (''Naturalis Historia'', 紀元77)の中で天然に産出する銅系鉱石の一種としてアウリカルクム auricalcumについて触れており、かつては非常に価値があり珍重されたものの、今では失われてしまっていると述べている。(Pli.H.N.34.2)フラウィウス・ヨセフス|フラウィウス・ヨセプス (Flavius Josephus, 本名ヨセフ・ベン・マティアス Joseph Ben Matthias, 紀元37/38?100)の『ユダヤ古代史』 (紀元93)第11巻のラテン語訳文において、ソロモンの宮殿にアウリカルコム製の器が奉納されていると記述しているものがある。但しギリシア語原文においては、 「χαλκα? σκε?η χρυσου? κρε?ττονα (''chalka skeue chrysou kreittona'')(金よりも価値のあるカルコス(銅類)の器)」と表記されている(J.AJ.11.136)。同様に聖ヒエロニムス (エウセビウス・ソプロニウス・ヒエロニュムス, Eusebius Sophronius Hieronymus (St. Jerome), 紀元347頃?419/420)によって訳されたラテン語訳聖書(ヴルガータ|ウルガータ) (紀元405頃)の列王記上(1 Kings 7.45)や黙示録(Apoc.1.15; Apoc.2.18)では、それぞれアウリカルクム、オリカルクムという単語が真鍮に対するラテン語の訳語として使われている。このほかオレイカルコスが登場する古典ギリシア語文献としては、ステシコロス (''Stesichoros'', 紀元前632/629頃?556/553頃)の詩の断片(Stesich.88)、イビュコス (''Ibykos'', 紀元前6世紀頃活躍)の詩の断片(Ibyc.Oxy.1790.42)、ロードスのアポローニオス (''Apollonius'', 紀元前295頃?247以降)の『アルゴナウティカ (''Argonautika'',アルゴ船の勇者達)』(Apoll.Arg.4.973)、その師匠であるキュレネのカリマコス (''Kallimachos'', 紀元前305?240)の詩の断片(Callim.Lav.Pall.19, Lav.Pall. = Lavacrum Palladis)、パウサニアス (''Pausanias'', 紀元143?176年頃に活躍)の『ギリシア案内記』(Paus.2.37.3)、フラウィウス・ピロストラトス (Flavius Philostratus, ''Philostratos'', 紀元170頃?245頃)の『(テュアナの)アポロニウス伝』(Philostr.VA2.7,20)などがある。またラテン語のアウリカルクム aurichalcumが登場する作品としては、喜劇作家ティトゥス・マッキウス・プラウトゥス (Titus Maccius Plautus, 紀元前254頃?184)の、『クルクリオ』 (''Culcurio'')(Plaut.Cur.1,3,46)、『ミレス・グロリオスス』 (''Miles Gloriosus'')(Plaut.Mil.3,1,61)、『プセウドルス』 (''Pseudorus'')(Plaut.Ps.2,3,22)、ガイウス・スエトニウス・トランクィルス (Gaius Suetonius Tranquillus, 紀元69?122以降)の『ローマ皇帝伝』のウィテリウス伝(Suet.Vit.5.1)などがある。一方ラテン語のオリカルクム orichalcumが登場する作品としては、紀元前44年のマルクス・トゥリウス・キケロ (Marcus Tullius Cicero, 紀元前106?43)の作品である『義務論』 (''De officiis'')(Cic.Off.iii.23)、紀元前15年頃のクィントゥス・ホラティウス・フラックス (Quintus Horatius Flaccus, 紀元前65?8)の『詩論』(''Ars poetica'')(Hor.A.P.202)などがある。これらの作品のオリハルコンが何を指すかは正確には分からないが、楽器や装飾品の材料として登場することから、真鍮や黄銅鉱と解釈されることが多く、各国語に翻訳されている。10世紀末に完成した百科事典的ギリシア語辞典であるスーダ辞典によると、オレイカルコスは自然に産する金属で、透明な銅のようなものだったが、もはや採掘が不可能となったと解説している。

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