組成・製造・構造
ガラスは、主成分となる二酸化ケイ素 (SiO
2) 原料(ケイ砂が多い)と副成分となる種々の金属化合物を粉末として混合し、高温で溶融して液体状態としたものを急冷することで製造される。使用済みのガラス製品を破砕して原料(カレット)として再利用することもできる。副成分として加えられるのは多くの場合は酸化物であるか高温で酸化物となるものである。主な副成分には、酸化ナトリウム (Na
2O) 、酸化マグネシウム (MgO) 、酸化カルシウム (CaO) 、酸化ホウ素 (B
2O
5) 、酸化リン (P
2O
5) などがある。原料となるこれらの酸化物は役割に応じて大きく次の3つに分類される。
網目状酸化物
: それ自身でアモルファス|非晶質化できるもの。網目状のネットワーク構造を形成する。(SiO2) 、(Al2O3) など。
修飾酸化物
: それ自身では非晶質化できないが、上記の網目状酸化物の形成するネットワーク構造内では非晶質化が可能(= 網目を修飾する)なもの。(La2O3) などの希土類元素|希土類酸化物が中心。
中間酸化物
: 網目状酸化物と修飾酸化物の中間的な存在。非晶質化しにくく、網目状酸化物と修飾酸化物との混合によってガラス化する。上記の溶融法によるガラス製造は古代から知られているが、現在では他の製造法も存在する。化学気相成長|CVD法(chemical vapor deposition method, 化学蒸着法)やVAD法(vapor-phase axial deposition method, 気相軸付け法)では、気体のSiCl4を加熱基板上で反応させて酸化物を堆積し、焼結してガラス化する。分散系|ゾル-ゲル法では、例えばテトラエトキシシラン (Si(OCH2CH3)4) などの金属アルコキシドを加水分解し縮重合させてゾルとし、水分を除いて生じたゲルを焼結してガラス化する[日本化学会編「化学便覧応用化学編-第6版-第I分冊」丸善 (2002) 13.5 汎用ガラス・ほうろう][長倉三郎、他(編)「岩波理化学辞典-第5版」岩波書店 (1998/02)]。ガラスは図に示すように原子の並びが不規則な非晶質である。結晶では固体の中の結晶界面で光が散乱したり方向により光学特性や力学特性が異なったりするが、ガラスは非晶質なので全体が均一で透明であり、特定方向にだけ割れやすいということもない。
Image:SiO2 - Quarz - 2D.png|水晶の分子構造 結晶を形成している。ケイ素原子(黒丸)と酸素原子(白丸)からなる。以下の3点のモデルでは二次元構造を示す。
Image:SiO2 - Glas - 2D.png|アモルファス構造をとった二酸化ケイ素
Image:Kalk-Natron-Glas 2D.png|ガラスの分子構造例 アモルファス構造をとった二酸化ケイ素が骨格となり、ナトリウム・イオン(薄緑色)、カルシウム・イオン(緑色)を含む。桃色はイオン化した酸素。アルミニウム原子(灰色)が安定剤として働いている。
ガラス状態について
ガラスは液体状態を凍結したような状態(粘度が極端に高くなった状態とも言える)であり、それは準安定状態にあると言える。従って、非常に長時間を経過するとガラスは安定状態である結晶化すると考えられるが、それに対しては異論もある。また、ガラスは固体ではあるが、過冷却およびガラス転移により粘度が非常に高くなった液体であるという捉え方もある。ガラスとアモルファスは、ほぼ同義のものとして捉えてよい場合が多いが、ガラス転移点が明確に存在しない場合をアモルファスと定義するような場合(分野)もある。ガラス転移とは主緩和の緩和時間が100s〜1000sの温度で起こる。ガラスと同じ構造、すなわちガラス化する物質は珍しくない。ヒ素や硫黄|イオウなどは単体でガラス化する。酸化物ではホウ酸 (B2O5) 、リン酸 (P2O5) などが二酸化ケイ素の代わりに骨格となってガラスを形成する。ホウ酸塩ガラスは工業的に重要である。例えばパイレックスガラスは重量比で12%のホウ酸を含む。